鍼灸治療の内、複合的な内臓の機能失調や
脳脊髄液循環の停滞の調整を主に、
心身全体の治癒力・回復力の向上を目的に行う治療を本治法という。
喩えて言えば、川の浄化作用そのものを高めるような治療法である。
また当院では伝統的な東洋医学では軽視されている
骨格上、構造上の歪みも重要視している。
様々な内科的な問題は、すなわちソフトの問題は
必ずハードである骨格、構造の影響を受けるからである。
よって当院では、伝統的な東洋医学の枠を超えて、
厳密な骨格診断の上で治療に当たっている。
例えば氾濫や停滞などを生む川の流れの問題点を修正する
いわば護岸工事のようなものである。
さて、東洋医学には瘀血(おけつ)という考え方がある。
狭義には抹消静脈の鬱血、すなわち血の停滞、
或いは停滞した血そのものの事を指し、
広義には瘀血が発生し、滞留するような病態を
血瘀、瘀血証、或いは肝実と呼んでいる。
停滞した血は新鮮さを失い、老廃物が増え、
各組織を充分に栄養できなくなるため、
様々な疾病の原因となり、治癒を遅らせる要因となるものである。
この瘀血の解消に適した治療法として、「刺絡」という鍼治療がある。
専用の特殊な鍼を使って瘀血所見を現わしている皮膚の1点を切開し、
吸角(吸い玉)と呼ばれる減圧して真空を作りだす器具を使って、
或いは吸角が使えない部位では手絞りで瘀血の排泄を促し、
もって新たな血を呼び込み早期回復を期待するものである。
川で言えば、川底に溜まった汚泥、瓦礫、ヘドロなどを掻きだす、
言わば川浚いのようなものだ。
効果的な治療法ではあるが汚泥を浚うよりも
汚泥の溜まりにくい流れをつくる、
浄化作用を高める本治法の方が大切であり、
あくまで刺絡は本治法の補助的な治療であると言える。
当院では打撲・捻挫、むち打ちなどの外傷や
瘀血所見が顕著で病態の固定化が進んでいるような場合などの
治療開始初期に1回から数回行うことがあるが、
必要ないと判断したら、本人が望んでもすることはない。
さて、最近ある患者さんから衝撃的な告白を受けた。
アトピー様の皮膚症状に悩まれ、特に顔面の瘀血所見が顕著で
女性であることから、治療当初に数回顔面への刺絡を行い、
以後は本治法のみを行っている。
全体として肌艶が良く明るく柔らかになり、
背中の湿疹も腹部の緊張も取れ、むくみもなくなり、
少ししか開かなかった口が開くようになり、
顎のラインがスッキリとして小顔になり、
夜もグッスリ眠れるようになったという。
なのに彼女はほぼ毎回のように
「血が出る血が出るタラタラ血が出る」とのたまうのだ。
こんなに肌の肌理(キメ)が整ってきているのに
血が出るなんておかしいなと思っていたが、
よく聴いてみると
「痒い部分をを自分で引っ掻いたり
カサブタを剥がして血を出している」と言う。
「血を出したらスッキリするから」と。
んなアホな・・・・・。
そんなことする人がいるなんて!!!。
血が出てたんじゃなく、自分で傷つけて血を出していただけ。
怪我したら血は出るでしょそりゃ・・・。
そもそも瘀血は正常の血より粘着度が高いので
刺絡してもジワ、ドロっと滲みだすように溢れてきて、
必要量排出されればじきに止まってしまう。
タラタラとは流れません。
ハァ〜、溜息が出ます・・・。
色んな人がいるもんですね。
勉強になりました。
けれど今回のことは、
治療に依存的になって養生に励まない方が多い中、
自分で出来ることは何でもしようと
主体的に治療に取り組んだ彼女の姿勢を現わしており、
それ自体は素晴らしいことです。
ただやり方が間違っていただけで。
想像だにできない突拍子もない間違い方で。
しかし、間違いを間違いと気づけたなら改めれば良いだけ。
今日改めることが出来たなら明日はきっと変わるし、
そうすれば間違いも無駄にはならない。
間違いを間違いと知って改めない、
或いは間違いを間違いと認めない。
そんな精神性が治癒への最も深く大きな障害となる。
さて、良かれと思ってやっているあなたのそのやり方、
間違っていませんか?
『精要(まこと)なきものに精要(まこと)ありと思い
精要(まこと)あるものを仮(あだ)と見る人は
いつわりの思いにさまよい
ついに真実(まこと)に達(いた)りがたし
精要(まこと)あるものを精要(まこと)ありと知り
精要(まこと)なきものを仮(あだ)と見る人は
正真(すぐ)なる思いにたどりすすみ
ついに真実(まこと)に達(いた)るべし 』
法句経(友松圓諦訳)
加古川の根本治療専門院 鍼灸治療院きさらぎ http://sinq-kisaragi.net/
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